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『青春怪談』 の時代と祖母

青春怪談 (ちくま文庫)

青春怪談 (ちくま文庫)

獅子 文六『青春怪談』 (ちくま文庫)

不思議なテンションの高さがずっとつづくんだな、と思ったら新聞連載だったそう。テンション高いし、キャラ小説だし、ラブコメだし、と書くとライトノベルになりそうだが、いまいち違う。皮肉というか、上から目線が多いからか。

「パチンコ」とか「バー」とかが当時最新の流行の商売だったらしい。「バレエ」のダンサーもか。勉強になったけど、時代劇という感じ。ちょっと古いけど、現代ならIT系みたいな感じだろうか。

それにしても、なんて句点が多いのだろう。慣れるまで困った。

などと不平を垂れ流しながら読んでいたら、祖母が死んだ。

計算してみると、祖母はこの作品の時代では35歳くらいだろうか。悪役の船越トミくらいの年齢だ。もっとも、祖母は当時の普通の女の人だったから、既婚で子どももいた。

小説では、主人公・慎一の母・蝶子が、息子に縁談の話が持ち上がり、うきうきして着物あつらえていると描かれるが、祖母は性格的にはむしろこの蝶子タイプだったと思う。というか当時のお嬢さん育ちの女性の典型なのかも。

『青春怪談』と同じ時代には、祖母はお金がなくて買えなかったみたいだが、中年以降旦那の懐があたたまると、とたんにきもの熱再燃。

うちの母は、きもので出られるようなイベント(卒業式、成人式、他人の結婚式、着付けの学校のパーティーなど)の前になると、知らないうちに新しいきものが用意してあったという。

俺はその話をガキの頃から聞いていたから、きものというのは、なんかそんなに高いものではないと思っていた。雰囲気的にはスーツと同じくらいかと(もちろんそんなことはない。絹の新品のきものはとても高くて、本当に吊しのスーツとは桁が違う)。

というわけで、遺影もきもの。俺が生まれたばかりの約30年前の写真で、孫の誰かのお宮参りの記念写真だ。

晩年はきものを着る体力もなくてかわいそうでした。

最後は老衰というか、たぶん餓死でした。おしりの褥瘡(床ずれ)が痛いからと、テーブルにつきたがらない上に、嚥下力も落ちてしまい、ろくにものを食べなくなってしまったのだ。2、3年前まではちゃんと一人前食べていたのだが。

僕の記憶にある一番若い祖母は、僕が3歳くらいのときだから、65歳くらいだったはず。いまのうちの母親くらい。

30年って短いのにな。祖母が亡くなったことよりも、たった30年でこんなに変わるのかという感じ。というか、具体的にはうちの両親もあと30年でああなるのかと思うとなんだかショックが。

僕が生まれてここまで過ごした30年という年月はそんなに長いものだったのかと思う。

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