『ブリティッシュ・ベイクオフ(The Great British Bake Off)』が我が家で流行っている。Amazon Primeビデオで見ることができるBBCの素人のお菓子作りのコンペティションである。最近NHKが吹き替え版を地上波で放送しているようだ。
『TVチャンピオン』を思いだしたが、お国柄というのはあって、ずいぶん違うものだ。 それに、毎週末に2日収録し、1時間に編集して放送する。それが8週分もあってずいぶん1シリーズが長い。出場者に愛着もわくだろう。
また、ニホンのバラエティーはなぜかスタジオのタレントの反応をつけないと放送できないらしいが、そういうのがなくて画面がシンプルだ。
「ベイクオフ」の当初のコンセプトには、伝統の食べ物や地方の特産物の掘り起こしが含まれていたようで、シーズン1などではやたらと歴史の紹介が入る。
我々にとってはやや物珍しい文化だけど、イギリスの人達にとってこの番組は、我々にとってのだしの引き方や、正月の重箱の中身みたいなコテコテの伝統料理のコンペティションなのかもしれない。
よろしければ見ていただきたい。
以下では見慣れない単語について調べている。
用語
イギリスの製菓事情は意外と日本とは異なっている。 伝統というのは変なところに残るらしい。
我が家は母と弟が菓子を作るが、ぜんぜん知らない概念も多かった。
ペストリー
パイとかタルトとか、なんとなく油でサクッとしてて、皿状にした上に具が載っていたらペイストリーである。
ペイストリー[……](英: pastry)とは、穀粉、バター、ショートニング、ベーキングパウダーまたは卵等の材料を焼いて作った食べ物である。 [……]ペイストリーはまた、これらの食べ物を作る生地も指す。ペイストリーの生地は薄く押しのばして料理の土台に使われる。 一般的なペイストリー料理にはパイ、タルト、キッシュがある。 (出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
なお、審査員のポールとメアリーは生焼けの底を非常に嫌うので、注意だ。
ペイストリーには甘くないもの(セイボリー)もある。「セイボリー」はおかずっぽいものが具になっている。この単語はブレッドやプディングにも使う。
英語を聞いていると、パン生地は「ドウ」といい、ペイストリー生地は「ペイストリー」というようだ。 生地としてのペイストリーには下記の物がある。
パフ・ペイストリー: いわゆるパイ生地のように見える。冷凍のパイシートをのように、焼くと多数の層に分離する。動物性の冷やすと固まる油脂をサンドイッチして、伸ばしてたたむことをくり返すやつ。
ショートクラスト・ペイストリー タルトやパイで、焼いたときに層にならないやつに似ている。植物油でもいけるので、我が家のスタンダード。メアリー・ベリーのレシピでは全材料をフードプロセッサーにかけているのがわかる。
シュー・ペイストリー これは日本の人にもわかりやすい。シュー生地。シュークリームの生地。コンロの上で練ってたらこれ。
フィロ・ペイストリー 非常に薄く引きのばした、油脂の少ない生地。ばかでかい餃子の皮かシュウマイの皮。油脂を塗りながら重ねたもので、具を海苔巻き状に包む。古典のようだが、ときおりこういうめんどくさい課題を課されるのが「ベイクオフ」である。
プディング
謎。辞書的にもひどいことになっている。具がぐちゃっと集合して、完全には固まっていないようなイメージなのだろうか。
pudding 音節pud・ding 発音記号・読み方/pˈʊdɪŋ/ 1 不可算名詞 [種類・個々には 可算名詞] プディング 《小麦粉などに果実・牛乳・卵などを入れオーブンで焼いたり蒸したりした菓子または料理》. 2 不可算名詞 [種類・個々には 可算名詞] 《主に英国で用いられる》 (食事の最後に出される)デザート. 3 不可算名詞 [種類・個々には 可算名詞] [通例複合語をなして] ソーセージ. 『研究社 新英和中辞典』
我々の「プリン」のオリジンはフランスらしく、番組中ではフランス語の「クレームカラメル」、英語の「カスタードプディング」どちらも出てきたと思う。
難所
番組を見ていると、いくつかやばいポイントがあるのがわかってくる。審査員もわかっていて、出題したりする。
カスタードは大変である
コンビニでも売っているカスタードだが、意外と粘度の調整が難しいようだ。タルトのカスタードソースが切ったときに流れ出るとアウト。ディザスター(災害)。プリンのように形をたもちつつ、なめらかで、やわらかくなければならない。食べたことないけど。
チョコレートは大変である
チョコレートにまつわるトラブルは多い。ガナッシュが分離したり、テンパリングの失敗で固まらなかったり、つやがなかったり(「シャイニーじゃない」)。 チョコレートのままでも、テンパリングで失敗して、審査員に「シャイニー」じゃないと言われたり。
キャラメルは混ぜてはいけない
キャラメルは水と飽和する以上の砂糖を混ぜて火にかける。このとき、途中で中身を触ると、タイミングによっては衝撃で再結晶化するらしい。フォンダンと呼ばれる白く濁ったザラザラになるようだ。
砂糖の融点は100度台みたいなので、固体のグラニュー糖の水溶液から液体のグラニュー糖の水溶液になるのだろう。どういう相転移なのかよくわからないが、ある温度では、飽和量を超える砂糖が水に溶解している状態になるらしく、非常に不安定らしい。私にこれ以上の説明は無理なので:
アイシング
アイシングとは何か。日本でアイシングというとまずクッキーに絵を描くあれだと思う。クッキー以外にもかけるが。 俺は、あの白い、ほぼ砂糖の塊みたいなやつ(「フォンダン」っていうの?)だと思っていたが、ケーキにコーティングする何かは全部アイシングと言っているのだ。
生クリームを泡立てたもの、バタークリーム、ある種のメレンゲ、マジパン、フォンダン。すべて。
また、アイシングシュガーはよくチョコケーキの上からかけたりする、粉砂糖である。 マジパンの加工時などに打ち粉としても使うのは驚いた。
flavour
聞いていると味も香りも「フレーバー」である。大ざっぱ。 そもそも、食レポのボキャブラリーがびっくりするほど貧弱だ。
"comming through"
フレーバーのうち、日本語では風味呼ぶもの(オレンジの風味とか、レモンの風味など)について議論しているときに、表現として"<風味の元> comming through"って言ってる気がするんだけど、辞書にない。聞き間違い? 何か別の単語なのかな。