ついにWHOの警告レベルがフェーズ5になって、晴れて人間様向けにもやばいウィルスとして認定された、豚インフルエンザ由来の新型H1N1インフルエンザウィルスが、各方面で話題になっております。
ぼくの読んでいるフィードの中にもちらほら。
「DNA配列フェチの皆さん」
ところで、川端裕人氏のブログのコメント欄、T_Hash氏のブログ、およびスラッシュドットのコメント欄に登場しているページがある。
はい、どうみても一般人向けではありませんね。
http://slashdot.jp/comments.pl?sid=448331&cid=1557332
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/SwineFlu.html
DNA配列フェチの皆さんに配列が公開されています。
とりあえず、東京都の方はPCRの用意が出来たようです。
…
投稿 sionoiri | 2009.04.30 12:11
これをまず川端ブログでみて「DNA配列フェチの皆さん」って…(笑)とか、思ってたら。
ほんとにいたw!厳密に言うと配列ではないのかもしれないけど!
Swine Flu Outbreak, Influenza Virus Resource
こいつはあらゆる生物に感染したあらゆるインフルエンザウイルスを世界レベルで収集しているInfluenza Genome Sequencing Projectというものの一貫で、NCBIのゲノム配列データをまとめて、関連情報を紐づけている。何処で何月何日に何歳の患者から採取されたウイルス、ということまでわかる!
ちょっと前に「ニュージーランドで感染を確認」という報道がされたと思うけど、既にニュージーランド(Auckland)で採取されたウイルスのゲノムが公開されている。最近は配列を読むのが爆発的に速くなってきているとは聞いていたが、RNA配列の特定も半端ない速度だ。Rapid Determination of Viral RNA Sequence(RDV)法という手法を使って特定しているらしい。
いいぞ人類もっとやれ!
データが公開されているならいじってみたくなるのが人のサガ
既に各フラグメントタンパクのアミノ酸配列もいくつか特定されている。
...よし!構造生物学屋の端くれとして、少しデータをいじって構造的な知見を得られないものかともにょもにょしてみよう。例として、4月1日にカリフォルニアで採取されたウイルスのhemagglutinin (HA) geneの部分の構造を調べてみたい。
弱毒性、感染力は中〜強くらい/豚肉が不安とかナンセンスすぎる
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おれのチートシートである『エピデミック』で描かれるウィルスは、たしか感染していくうちに死亡率が低下、感染力も低下するという設定だった気がするのだけど。
以下の記事をながめた限りでは「弱毒性だろう」という見解で一致している。
ただ、感染力についてはまだ疫学的なデータが揃ってないという感じか。id:Hashは「感染力は通常レベル」としているが、スラドのy_tambe氏のコメントをみるとやはりそう簡単には安心できないかという感じだ。
それにしても豚肉が不安とか、ちょっとナンセンスすぎる。
混雑したスーパの店内のが、むしろ不安である。
豚肉の風評被害が…とか、「豚肉は安全です!」とかいわれるのに、なぜ京成線および直通の都営浅草線、京急線の風評被害は話題にならないのか、非常に疑問です。
鳥インフルエンザに関しては
70℃以上で、生肉や赤身が残らないように加熱調理
すればだいじょぶとのことですが、豚肉に関してもほぼ同様のようです。
中心温度71℃での豚肉の調理により、他の細菌やウイルスと同様、豚インフルエンザは死滅します。食中毒予防の観点からも、生の豚肉に触った手や調理器具はしっかり洗い、食品は十分に加熱しましょう。
世界保健機関(WHO)緊急委員会委員の田代真人・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長は28日、記者会見し、今回のウイルスは「弱毒性」との見解を示した
…
被害については、現在の毒性が変わらなければ、パンデミックを起こしても、約200万人が死亡した57年の「アジア風邪くらいかもしれない」
インフルエンザの影響力をざっくり「感染力」と「毒性」で分けるならば、今回の型は"感染力は通常レベル、毒性は弱い"というもので、「人類もうだめだレベル」には達していない。問題は誰も免疫を持っていないことだ。
Re:鳥インフルエンザとは違う (スコア:5, 参考になる)
y_tambe (8218) : 2009年04月30日 11:11 (#1557332)
『ウイルスは弱毒性 (mainichi.jp)』と田代WHO委員が発言した」という報道がされたようなので、確認のため、とりいそぎ情報を集めてみましたところ、各地で分離されたウイルスのゲノム配列が解析され、その結果がNCBI PubMed(nih.gov)の特設ページで公開されてました。
…インフルエンザの「強毒性」「弱毒性」というのは、必ずしもHAの開裂性だけによって決まるものではなく、もっと総合的に見て判定すべきものなので、ホントはHAの開裂性だけで「強毒性でない」と言うことはできないのですが、ただHPAIでの強毒性というのが通常のインフルエンザから見ると桁外れのものにあたるので、「HPAI様のものではない」というだけで、かなりの安心材料ではあります。
つっても、過去に流行した「新型インフルエンザ」、すなわちアジアかぜや香港かぜ、ソ連かぜと同様のパンデミックを起こす可能性はありますので、依然として注意と警戒が必要なことには変わりありません……仮に、これが今の日本に入ってきたときに起こることが予想されるのは「通常のインフルエンザと同様な病気ながら、大流行を起こすこと」になる…つまり、これまで職場の2-3人がインフルエンザに罹って休んでたのが、その流行では職場の全員が罹る(しかもいつもより強烈)ような事態になる、という感じ……つーか、もともとウイルス学者が20年くらい前から「いつ次のパンデミックが起こってもおかしくない!」と言いつづけてたのは、むしろこっちのタイプであって、逆にHPAIパンデミックの方が「はるかに予想を超えた脅威」だったのですけどね。
ただコメントでも触れられてるように、次のステップで最も警戒しなければならないのは、今回の新型インフルエンザとHPAIが組み換えを起こして、HPAI型のHAを持った新型がさらに出現することです。引き続き、HPAIの発生状況についても、従来以上に気を配る必要があります。