- 作者: 浅田次郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/09/15
- メディア: 文庫
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主人公、「椿山課長」は高卒でデパートに入社、本店の売り場一筋でやってきて、客商売独特の笑顔や仕草、柔らかい物腰が(本当に)死んでも抜けないような男だ。40代半ばだが、ハゲている。登場人物によれば「アブラギッシュ」なおじさん。押しが強いトークもできる。それらを含め、サラリーマンとしては、周囲から尊敬され、愛されていた。ただ、モテるタイプではない。恋人としての面では、結構けっちょんけちょんに言われるし、家族に対する思いはとてもあついのにも関わらず、実は裏切られていること、気づかれていることに気づいていなかったりする。
この人物にかぎらず、器用さと不器用さのバランス、その配置が非常にうまい。ここにいるのは「矜持」とか「覚悟」とか、そういう言葉が似合う人々たち。恨み言はいわない。逃げることもあるけど、つよい。
だから、しつこいけれど、彼は枯れてなどいない。「枯れて」こうなったわけではないのだ、はじめからこうだったのだ。
(表紙のおじさんは枯れすぎている感じがする。)