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だまんです。

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特例有限会社の社長交代の登記をする(3) 一般人をいきなり「社長」にする・添付書面

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目次: (1)まとめ (2)「登記すべき事項」と申請書 (3)一般人を「社長」に・添付書面 (4)「申請用総合ソフト」・提出

一般人がいきなり「社長」になるには

 (ここでは社長=代表取締役のこととします。)
 さて、一般人が、いきなり「社長」になるというストーリーの書類をどう作るのかですが。

 ところで、「社長」という言葉を使ってきましたが、登記のしくみ上はこの用語はありません。法律上の会社の代表は、「代表取締役」がついている人なのです。
 ただし、わかりやすいように、ここでは社長=代表取締役の場合に限定して話を進めていきます。
 なお、会長など他の人が「代表取締役会長」だったりする場合の社長交代は、登記上ヒラ取締役の辞任&就任と同じなので、わりとかんたんです。しかし混乱するので、ここでは扱いません(必要なら検索してください)。

まず新任者を臨時・定時株主総会で取締役にします。

 取締役でない人を社長にはできないので、株主総会で一旦ヒラの取締役にします。ここではまだ登記しません。

 取締役就任は、どんな会社だろうと——取締役会があってもなくても、代表が互選でも——取締役たち自身の権限では決められません。必ず総会を経ないといけません。
 したがって「取締役就任」と「取締役重任」の証拠としては、取締役を選任した株主総会議事録だけが有効です。
 証拠というのは、登記の際、きちんとした手続きを経て選んだという証拠を示す必要があるのです。そこでこの取締役を選任した株主総会議事録が必要になります。

次に、取締役の中から代表取締役を選びます

 これについても登記の際はきちんとした手続きを経て選んだという証拠を示す必要があって、

  1. 代表取締役を選任した株主総会議事録
  2. 互選書

が必要です(どちらになるかは定款の規定による。規定がなければ1)。

以上の書類をそろえて、登記申請を行います。

代表取締役の選任について

 といっても、これだけでは議事録の内容をどうするかがわからないですよね。なのでもう少し詳しく書きます。

 一般人を取締役にした後、これを代表取締役=社長にする方法についてもう少し書きます。
 株式会社および取締役が2人以上になった特例有限会社では通常、代表取締役を選ばないといけません(定款に「代表取締役」「代表者」「社長」などの規定があるとき)。何事も定款を見ないと判断できないのですが、ここではありがちなパターンについてのみ考えてみます。

 下記の箇条書きは株式会社(含む特例有限会社)での代表取締役選任の全てのパターンです。
 特例有限会社は法令上、取締役会を設置できないので下記の下側(「取締役会非設置」)のうち、いずれかになります。(うちの会社では前述の通り「互選」パターンでした。) なお、カッコ内は登記のとき提出する主な添付書面です。

  • 取締役会設置:取締役会の決議により選定(取締役会議事録)
  • 取締役会非設置:次の3パターンから定款で決める。
    • 定款に名前を書く(株主総会での定款変更の特別決議の議事録)
    • 定款に取締役の互選と書いてある(互選書、就任承諾書+印鑑証明書)
    • 定款に規定がないか、株主総会の決議と書いてある(株主総会代表取締役選任の特別普通決議の議事録)

 何を言いたいかというと、とりあえず定款を用意しないと話が進まないということです。ご理解いただけましたでしょうか。
 さて、それでは、定款を見てどのパターンか分かったという前提で、各パターンごとの書類の書き方に進みます。定款が不明な場合についてもその後で述べます。

株主総会で社長を選任する場合(議事録作成)

 株主総会を行い、必要な決議をします。議事録は各種テンプレートを参考に。
 登場人物を全部集めても1人とか2人にしかならないときは、先に書類(議事録)作ってハンコおすだけでもいいのかな……。そのような場合、可能な限り実態通りに記したい(会ってないのにあったことにしたくない)なら「書面決議」または「みなし決議」という方法もあるが(だいぶ書面が増えますが)。

 ところで、だいぶ余談だけど、取締役も代表取締役も全部株主総会で決める(定款に互選の規定のない)とき、この「取締役選任」と「代表取締役選任」を一辺にやると、第1号議案「取締役選任」+第2号議案「代表取締役選任」として決議してよいのだろうか。つまり、通常、選任した新しい取締役は株主総会の閉会をもって就任となるのに、まだ厳密には取締役に就任していない人間を代表取締役に選べるのかということだ。
 この件、うちは株主総会1回で書いてみることにした。ちなみに、間が空く場合、社長は次の社長が選ばれる株主総会の終わりまでは社長の務めを果たすらしい(空白はできない)。
 株主と役員の全員が同意しているんだから、1発でやっても2発に別けても変わらないし、ね(?)。

 そういうわけで、以上のことを議事録にするとこんなかんじだろう。
 ちなみに、「退任」は任期切れ。任期途中で辞表を出すのが「辞任」だそうだ。

第1号議案 取締役及び監査役の任期満了に伴う改選に関する件
 議長は,取締役及び監査役の全員が本定時総会の終結と同時に任期満了し退任することになるので,その改選の必要がある旨を述べ,その選任方法を諮ったところ,出席株主中から議長の指名に一任したいとの発言があり,一同これを承認したので,議長は下記の者をそれぞれ指名し,これらの者につきその可否を諮ったところ,満場異議なくこれに賛成したので,下記のとおり再選重任(※新任者の場合は就任)することに可決確定した。
取締役 法務 太郎
同   法務 一郎
同   法務 次郎
監査役 法務 三郎
なお,被選任者は,いずれも席上その就任を承諾した*1


第2号議案 代表取締役の任期満了に伴う改選に関する件
 今般代表取締役法務太郎が取締役の任期満了により代表取締役の資格を喪失し退任することになるので,改めて当会社の代表取締役(社長)を選定したい旨を述べ,その選定方法を諮ったところ,出席株主中から議長の指名に一任したいとの発言があり,一同これを承認したので,議長は下記の者を指名し,この者につきその可否を諮ったところ,満場異議なくこれに賛成したので,以下のとおり
可決確定した。
代表取締役 法務 太郎
なお,被選定者は,席上その就任を承諾した。

なお、この議事録に、
「なお,被選定者は,席上その就任を承諾した」
という一言がないと、他に新社長の就任承諾書と印鑑証明が必要なるかもしれません(互選書においても同様)。
 この手の議事録の非公式なテンプレートはいくらでも転がってますが、読むときは慎重に。
 また、この議事録に限らず、すべての行について意図が説明できるか、1行ずつ検討してみることは重要だと思います。大抵は法令や慣例によるルールがあって、上記の例のように、ときどきルールを守らないと面倒が増えるのです。もちろん書いてある以上の意図がないときもありますが。

 あと、代表取締役が取締役ごと辞任するときは、後任の取締役を選任する総会のときに、氏名の後に代表印で押印できないらしい。
 総会議事録には、前代表取締役の名前の横に代表印を押すことで、他の前取締役は認印ですむ…はずなのだが、これができるのは最低限取締役として残るときだけなのだそうです…。
 代表取締役が取締役ごと辞めたり、登記所に提出した印鑑を株主総会の議事録に押印できない場合は、出席した(従来の)取締役全員が印鑑登録済みの印鑑を議事録の氏名のところに押し、「株主総会議事録に押印した議長及び出席取締役の印鑑証明書 ○通」が添付書面リストに追加されます。

 うーん、がんばって全員分の印鑑証明を集めるしかないか…。

互選で社長を選任する場合(互選書)

 ところが、うちの会社は、ここまで研究したところで定款が発掘され、ばっちり「互選」って書いてあったので(つまり株主総会の後に、代表取締役選任の会議を取締役だけで行い「互選書」を作るので)、上記の「同時にやっていいのか」という悩みは根本的になくなりました。っていうか、社長がやっぱり辞めないとか言い出してて、二重に関係ないという…。

 互選書の書式はわりとシンプルですので、ググってください。
 互選書だけではだめで、社長は互選だと書いてある定款のコピーが要ります(最後のページの次に紙を追加、奥書+代表者印)。

定款がどうしても見当たらないとき

 このように、提出する必要があるかどうかは置くとしても、定款を読まないと話が進まないわけですが、見つからないこともあるでしょう。
 一応、登記所は設立から5年*2公証役場は20年保管しているそうです。どうしても、必要ならそのような方法もあります。
 しかし、定款がどうしても見当たらない上に、公証役場の保管期限(20年)も過ぎているとき。あるいは、保管してあるもの(原始定款という)から変更してあるとき。
 このような場合、登記事項(登記所で登記事項全部証明書を買うか、「登記情報提供サービス」のデータを買う)と一致するようにでっちあげます。株主総会での定款変更の特別決議をしたことにすればいいらしいです(どうせ定款をてきとーに保管し、紛失してるのに事件にも問題にならない会社は、どうせ株主も全員身内とかでしょう……。銀行も預金だけだよね……)。まあ、定款は株主や役員や債権者が納得していればいいと思う。
 つまり、新定款と、定款を変更する株主総会の特別決議の議事録を作成するだけでいい。公証役場を訪問するより、こっちのが楽だと思う。
 こうすると、ちゃんと定款を全面変更したことになるので、気分は「でっちあげ」であっても正式なものになります。

 ちなみに、この定款については公証人の認証もいりません(あれは原始定款のみ)。たぶん登記も必要ないはず(登記と矛盾しないように作ってあれば)。

 うちも、こうなる覚悟をしてたので、僕もしましたが、幸い代表者が書類保存の上手い人らしく、30年モノの定款がサクッと発掘され、びっくりしました。なんだろうこれ、これが和文タイプってやつ?それともまさか活字組んだの?みたいな。高かっただろうねえ…。まあ、原本じゃなくてコピーで、その精度が低くて訂正部分が読めないけど。
 いまどき原始定款に手書きの訂正が入るなんて、よほど急いでるときだけだと思いますけど、なにしろ昭和50年代ですので(今なら普通プリントアウトしなおすよね)。
 そして、関係ないですが、設立者がこのとき30歳くらいで、地味にショックを受けたぜ。今の俺と変わらないじゃないか……。

添付書面

 互選書や議事録はそれぞれ法務省のテンプレや、ググって引っかかったもののつぎはぎですが、細かいことに注意が必要です。
 まあ、しかし面倒ですよね。うちは書類がそろってなかったせいもあるけど、ここに書いてあるようなことを調べ、提出書類を絞り込むだけで、素人がやると1週間以上かかっています。いっそのこと、司法書士とかに頼んだ方がいいかもね。頼むと、辞任や就任から、もう逃げられないし。
 はっきりいって開設登記のが簡単。登記事項を調べないで済むし、パターン少ないし、さがせばいやというほど出てくるし。

 結局、みんなこの添付書面の嵐に耐えられないんだろうな。
 まあ、ここまで書いていまさらだけど、無理そうなら、早めに見切りをつけて、近所の司法書士に見積もりを頼んだ方がいいんじゃないかなと思います。だって、せいぜい数万円とかじゃない? 家の近くの司法書士に頼めば、登記所まで行かないで良いんですよ。
 僕ももし突然誰かが死んだりして登記してくれ、2週間以内にやってくれとか言われたらパニックになると思う。

 で、添付書面ですが、

  • 株主総会議事録(取締役選任)(出席取締役=前取締役全員の記名押印、前代表取締役が新取締役の場合だけは代表印)
  • 互選書(社長選任)(取締役全員の押印、前代表取締役が現取締役なら代表印を押し、印鑑証明不要)
  • 互選規定がある証拠として定款のコピー(代表印で奥書・契印)

が必要になります。

 あと、微妙に登記する内容がちがうときもググって、必要書類と登記事項が同じでいいのか確認しましょう。僕はこの段になってもまだ頻繁にググってます。
 それにしても、新任で代表者になる可能性があって、しかも社長が役員もおりる可能性があるとか、そういうとき法務省のテンプレはその辺が曖昧というか、そのパターンを考慮してないようで、ちょっと困りました。
 それと、いまの社長が退任するなら、特例有限会社だと、取締役の人数と定款との兼ね合いで「代表取締役」を消したり追加したりする場合がありますが*3、その辺の機微も様式にはなかったと思います。

特例有限会社の社長交代の登記をする(目次): (1)まとめ (2)「登記すべき事項」と申請書 (3)一般人を「社長」に・添付書面 (4)「申請用総合ソフト」・提出

*1:注には、この文言があれば「申請書に就任承諾書を添付することを要しません。この場合,申請書には 「就任承諾書は,株主総会議事録の記載を援用する 」と記載してください」とある、重要な一文です。なお、申請書のどこに「就任承諾書は,株主総会議事録の記載を援用する 」を書くか、ということが書いてないが、僕は1ページ目「就任承諾書書 1通」を消して挿入した

*2:商業・法人登記に関する“よくある質問”:東京法務局 Q8

*3:有限会社に取締役が1人になった場合、代表取締役は設置できないので抹消したり、逆に取締役2人にしようとしたら定款に規定があって代表取締役を選ばなきゃいけなくなったりする。あるいは定款に代表取締役の規定がなければ、思いついて代表取締役の欄を抹消することもできる。

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