だまんです。

プログラミングや写真や本や読書会のことや、日常のこと。

えーと…カルチャーショックを受けとめるつながり?

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2冊紹介しますが、この選択には脈絡とか無いです。(いつもだってそうなんですが)読みたいものを読んだだけ。

桂望実/県庁の星

県庁の星 (幻冬舎文庫)

県庁の星 (幻冬舎文庫)

いまさらですが読みました。有名な作品だし、桂望実の他の作品も結構読んでいるのに、避けていたのは有名だから。というどうしようもない経緯ですみません。有名なので、あらすじとか書きません。


個人的に、ちょっと珍しいと思ったのは、主人公のエリート地方公務員(県職員)の感情や価値観の変化が、結構システマチックに描かれているんこと。各要素ずつ、まずそれを示すエピソードなどで問題を提示し、改善のきっかけと、改善された結果のエピソードもきっちり提示しているというか。それが、なんというかまるでPDCAサイクルのようだった。あるいはソフトウェアの開発工程とか。なんか(作中には大小さまざまなプロジェクトがでてくるのだけど)、これ自体もプロジェクトっぽい。
もちろん全体としては「とにかくやるの!」って感じの、ヒロイン(?)のパートが入るので、そんな印象はふつうはささっと吹っ飛ばされたりするのだろうけど。


追記: 藍色さんからトラックバックしていただきました。ありがとうございます!:
粋な提案 |県庁の星 桂望実

西條奈加/金春屋ゴメス

金春屋ゴメス

金春屋ゴメス

なんとなく、独立(孤立)の経緯は桂望実平等ゲーム』に近いが、こちらの方が破綻の可能性を織り込んでいる分、より持続可能な感じ。
ちなみに『芥子の花 (金春屋ゴメス)』というシリーズ2作目もあります。
関東の北の方に、江戸時代の江戸(旧御府内)とその周辺の農村地帯を再現した「江戸」という地域(私有地)があるという設定の、近未来の話。新しい「江戸」は「独立宣言」をし、日本国にだけは「国」に準じて扱われている。そこは、「江戸」の創立者に由来する「幕府」によって、渡航の可否から司法、さらには死刑執行までが行われ、実効支配されている。
素材レベルでは江戸時代以後のものを否定し、「鎖国」しているので、医療は本草学などを進歩させたものだったりする。入国は抽選で、1人1回までしか入国できない(入って出てしまったら、もう入れない)。
そこに、特殊な事情で行くことになった主人公が、その特殊な境遇ゆえにいろいろと事件に巻き込まれたりする。一応、ミステリータッチで、つまり時代小説の捕り物帳のパロディーでもあるのだ。

しかし、「江戸」がもし完璧に閉鎖されてれば、ただの「変な時代劇」になりそうだけど、お隣にある近未来の日本と「国交断絶」するわけにもいかないので、そうはならない。そもそも主人公は日本で育った大学生なので、それが突然ほとんど本家・江戸に等しい世界に放り込まれたらどうなるだろうかと、その主人公の驚きや感じる違和感、さらには郷愁、それからいろいろなプリミティブな感覚までシミュレートして書き込まれていて、細部も魅力的だった。

基本のトーンは爽やかでコミカルなのにもかかわらず、人が対処できないような黒い陰がときおり差すのは、あだち充『虹色とうがらし』を連想させられた。

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