ホラーかと思ってた…
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2002/04
- メディア: 文庫
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駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチル。奇妙な同棲生活が始まった?。書き下ろし小説。
なんか、盲目の女と殺人の疑いがかかっている男の、ほんのりじっくりとした交流の方がメイン。「殺人容疑」なので人が死ぬし、ミステリ的解決もあるのだが、あまりそこには重点が置かれていない。というか、それはあくまでも筋を整えるために着けたアクセサリーという感じ。
目が見えない側だけではなく、晴眼の男の方も、ずーっと家のすみっこに潜んでいるので、状況的にしゃべれない。そのために音に敏感になるし、ひたすら回想するしかない。さらには相手の存在をお互いに気づいても、まだしゃべらない。ついついお互いに相手のことを想像してしまう。しゃべらないと、感覚が敏感になる。体を動かしたときの空気の動き、物音、さらには闇の密度まで使って心境が描写される。
たしかに、ジェットコースター的なスリルはないし、「超大作」みたいなずっしりした重さも、ページ数的に無縁だけど、緩急をうまくコントロールしてる感じで、妙にほんわかした感じが面白かった。
ちょうど投げているのを見たばかりだったせいもあるのでしょうが、山本昌のピッチングが思い浮かんだ。球が、あの投げる動作のもたっとした見た目のわりに、なぜかなんとかなっちゃう不思議な感じとか。